成年後見人~司法書士は何をしてくれる?

介護との違い

身上監護と療養看護が役割の成年後見人ですが介護ではありません。

言葉だけ見ると介護を連想させますが、身上監護と療養看護を行うといっても 成年後見人の業務に介護士の仕事は含まれません。 お風呂に入るお手伝いをしたり車いすに乗る手助けをするのではなくあくまで 法律的な部分でのサポートに限定されるので、もしも要介護なら施設への入居 に向けて必要な手続きを代行する、定期的に介護人を派遣してもらう契約を結ぶ、 そういったことを担当するのが役割となります。 生活面でさまざまな援助を行うのだから髪の毛を洗ったりカットするのも役割 になるのではないか、それをしないのなら偉そうに援助をしているなんて言うべき ではない、気難しい人はそうおっしゃるかもしれませんが、施設で行われるような 介護は専門外ですしそれ系の資格もなければ学んでもいないので無理を言っては いけなません、担当が違うのです。 ベッドから起き上がるのを手助けしてもらいたいのなら介護士を求めるべきで、 法的なサポートを望むなら成年後見人を頼る、と覚えておきましょう。 たまたま打ち合わせでやってきた時に車いすに乗るのを手伝ってもらうくらいなら 全然問題なく引き受けてくれるでしょうが、本格的に介護してもらいたいのなら 別で介護要員を探すのが筋になるのです。 直接看護をしてもらいたいのなら施設にいる介護士にお願いする、その施設に入居 したいから手続きをするのなら成年後見人にお願いする、そんな感じになります。 あとは被後見人にはあまり関係のない部分になりますが、家庭裁判所に定期的に 現状の報告をするのも成年後見人のお仕事のひとつです。 これはどういうことか、まず成年後見人を選任するのは家庭裁判所であるから、 順調に役目を果たしているか、問題は発生していないかチェックする意味で報告 が義務付けられているのです。 身内の方が引き受けてくれたのならそんな堅苦しいことは必要なさそうですが、 最近では裁判所が司法書士や弁護士を選任して後見人に就任するケースが多く、 その場合は全く面識のなかった方にお世話してもらうことになるのです。 なので最初にやること、初仕事は顔を合わせての挨拶からになります。 これは通常の介護職の場合と同じですがここからはそうではありません。 選任された者は被後見人の所有する財産を知らなければならないので、貯蓄は どれだけあるか、有価証券は全部でいくらほどあるか、毎年の収入は何万円か、 など資産に関する情報を把握するためいろいろと聞きます。 もしこれを介護する者が必要も無いのにやってしまうと、「この人は財産目当てで 何か企んでいるのかしら、身辺に注意しなければ」と不審がられてしまいます。 でも成年後見人ならべつにあやしいことでもなく、今後の生活をどのようにする べきか計画を立てるのにも必要な情報ですし、なによりその財産を管理する立場 になるのですから知らなければならない情報でしょう。 管理するように任されたけれどどれを管理すればいいのかわからない、教えて もらえない、ではお互いに困ってしまいます。 なので最初の面談で顔を合わせたら、正直に所有する資産を申告してどのように 運用していくかなどの計画を立ててもらいます。 そして財産の目録もやはり家庭裁判所に提出します。 それができなかったりその後の報告も適切にされないようだと、後見人を解任 されることもあるのでしっかり真面目に取り組むところでしょう。 人の財産をわりと制限なく扱えるのですから、中には法に触れる行為を働く悪質 な輩が存在することもこれまでの歴史が証明しています。 そうしたことのないよう裁判所が監視しないとこの制度がうまく機能しないので、 報告を怠る者は信用ならんとなるのです。 そうでもしなければ被後見人が安心して生活を送れませんし、報酬を受け取って 引き受けているのですからこれくらいは当然でしょう。